八木澤商店も、来年2007年で200年になります。
全国には創業200年以上の老舗はたくさんあるから、歴史なんてなんの自慢にもならないけど、創業当時の世界はどうだったのかというと、けっこう激動の時代だったりするんだよね。
八木澤商店の創業は1807年。そこから18年遡ったアメリカでは、ジョージ・ワシントンが初代大統領に就任しているし、フランスでは4年前の1803年にナポレオン・ボナパルトが皇帝に即位している。すごいよね。
そんな中、東北の片田舎で酒造蔵としてはじまり、醤油・味噌屋となり、今ではその醤油・味噌に加えて、つゆとかタレ、漬物をつくるようにもなりました。
使用人を抱えて仕事をしていた時代もあるし、今もウチの会社の経理を担当している番頭さんは、高校卒業と同時にやってきて、10年くらい住み込みで働いていたんだ。風呂があって、仕事が終わると、みんなで風呂にはいっていたときもあるよ。
今考えると、いまの時代と自分を否定するようであんまり言いたくないんだけど、「あの時はいい時代だったよなぁ」。
なにがよかったんだろう。いまのほうが欲しいものはなんでも手に入るし、情報伝達もはやい。日本にいたって、世界のどこかの料理が食べたい、となればすぐに食べられるしね。
家業としての時代はよかった。僕は東京で学生をしていて、カントリー&ウエスタンに狂っていたころ。時代も八木澤商店もいまほど時間に厳しくないし、昭和40年代前半までは、鯨がたくさん捕れて、それだけのためにしょうゆをタンクローリーでめいっぱい運んだんだ。
3500Lタンクで一日なんども。
しょうゆが売れて売れて、おもしろい時代だった。こせこせしないで、のんびり、どっしりかまえていてもいい時代だったから。
サンマもとれたなぁ。となりは漁業の町、気仙沼。サンマの缶詰につかうしょうゆも運んだ。「イケイケドンドン」の時代は、忙しかったけど気持ちに余裕があって、エネルギーが満ち溢れてた。
いま、世の中が忙しい。その文字の通り、「心を亡くしてしまう」ことばかり。世知辛い世の中を生きていくのに疲労感を感じるよね、大人でさえも。こどもが生活習慣病になる世の中。ニュースは昔、こんなにも子どもが関係するいたましい事件てあったっけ?って思うほど。
そしてなにより、僕がいま一番「心を亡くす」ほど、こころを痛めているのは、「六ヶ所村」のこと。日本はこれから、どこへいこうとしているのだろう・・・って毎日気が気じゃない。
もう少し歳をとって、いまこのときを「あの時代はよかった」と思える日にしたい。そのために、昔カントリー&ウエスタンに狂ったように、いま僕ができることを一生懸命しようと思っている。
「六ヶ所村」のことはまたあとで。